レンジャー想定訓練によってどんな身体の異変が起きるのか?
レンジャー訓練とは陸上自衛隊の中で最も過酷な訓練と言われています。
特に山地における訓練では、、、
食べさせない、休ませない、寝かさない、、、
この3拍子で僕たちレンジャー学生「レンジャー訓練の被教育者」をドンドン追い込んできました。
40キロの背嚢「はいのう」を背負い、加えて小銃や各種装具を携行し道無き道をひたすらに進んだりして。
当然そんな訓練を続けていたら身体の方は無事に済むわけもなく。。。
ここではそんな僕のレンジャー想定訓練の最中に負傷した怪我の内容や身体の異変について説明していきます。
それではいきましょう!
レンジャー想定訓練での負傷1: 低体温症
僕が挑戦したレンジャー訓練の時期は秋頃の9月〜11月中旬の期間でした。
その為、レンジャー訓練後半に差し掛かった時期「11月ごろ」になると前半「9月〜10月上旬」の灼熱地獄だった基礎訓練とは一変して急激に寒くなってきました。
山に行けばその温度差は際立ちました。。。
関連記事:レンジャーの基礎訓練とは?
僕たちレンジャー学生はこの急激な温度差に身体が即座に順応する事が難しくある症状に悩まされてきました。
それが低体温症です。
低体温症の症状
体温と低体温症の症状
- 36.5~35℃ 寒気、骨格筋のふるえ(シバリング)がはじまる。 ...
- 35~34℃ 運動失調(よろよろと歩行)。 ...
- 34~32℃ シバリング減少、歩行不能。 ...
- 32~30℃ シバリング消失、身体硬直。 ...
- 30℃以下 意識低下が進み、瞳孔散大。 ...
- 13.7℃ 神経学的後遺症なく生存できた最低の深部体温。
↑引用元 https://www.jbpo.or.jp/crossheart/maintenance/14/
山での天候の変動はあまりにも激しく寒くなると辺りは一瞬で何もない状態から雪景色に変わることもしばしば、、、
上記で紹介された症状の中で僕たちが経験した症状は、👇
- 36.5~35℃ 寒気、骨格筋のふるえ(シバリング)がはじまる。 ...
- 35~34℃ 運動失調(よろよろと歩行)。 ...
- 34~32℃ シバリング減少、歩行不能。 ...
👆この辺りでした。👆
レンジャー訓練に限らず自衛隊の訓練では安全管理のため衛生兵が常に随行しているので、
本来こういった症状を見かけたら即座に低体温症と判断し対応できるのだが、
過酷な山地における想定訓練の行軍で意志崩れした隊員の様子も
フラフラして歩行がままならず目が虚ろになり、
低体温症における運動失調の症状と酷似していたため判断が難しかったのです。
意志崩れを起こした隊員なら仲間から励ましてもらいながら進んだり
場合によっては教官、助教に引きずられながら訓練続行するのだが。。。

低体温症なのか単に心が折れただけなのかの判断があまりに難しく今思い返しても
改めて危険な訓練だったなと思いました。
レンジャー想定訓練での負傷2: 初期の凍傷
僕が経験した初期の凍傷の症状は、
両手が指の先までパンパンに腫れ上がっていました。
指も腫れて爪がパリッと取れそうなくらいでした。ちょっと大袈裟ですが、、、
この症状で何が大変だったかというと
手の感覚がほとんど無かったことです。
助教に爪でかなり本気で手の甲を抑えられてもほとんど痛みを感じませんでした。
この手の感覚がない影響で握力がほぼ皆無、訓練中物がなかなか掴めずすごく苦労しました。
レンジャー想定訓練での負傷3: 味覚障害
極度の疲労なのか、内臓が弱っていたのか、正直原因は不明なのだが、
僕たちレンジャー学生の大半がある時期いっせいに味覚障害の症状に襲われました。
僕も含めた味覚障害になった仲間の具体的な症状としては
スナック菓子を食べてもただの粉の塊を食べてる感覚で不味い。
食堂のご飯もほとんど味がしなかった。
はっきり言うがレンジャー訓練期間での大部分の楽しみの1つは『食事』といっても過言ではない。
普段の自衛隊生活では、種類にもよるが美味しいとは言えない演習などで支給されるレーション「パック飯」。
レンジャー訓練期間はそれを素直に美味しいと思えるほど食事には感謝できるのだ。
その楽しみを根底から奪われた気分でかなり気が滅入りました、、、
レンジャー想定訓練での負傷4: ストレスによる内臓の負荷
レンジャー訓練期間中ストレスが原因で2つの病気を患いました。
1つが過活動膀胱炎「かかつどうぼうこう」。
2つ目が過敏性大腸炎「かびんせいだいちょう」。
要するに頻尿と頻便のダブルパンチです、、、

いずれも原因はストレスだそうです。
特に頻尿が凄かった、、、
1時間に1回ペースで小便が止まらない。
就寝中であっても止まりませんでした、、、
どうしても1時間に一度目が覚めてしまいトイレに駆け込んでしまう。。。
最悪だったのは想定訓練の行軍中でさえ頻尿は止まらずひどい時は30分に1回ペースで小便してました。
行軍中水をほとんど飲んでないのにもかかわらず、、、
助教に『お前こっそり水飲んどんじゃないか?』と疑われたり
『そんな水分放出してたら干からびるぞ?』と心配されたりしました。。。
そんなある日、ついに最悪の事件が起きました、、、
想定訓練が終了して終礼の最中の事。
僕たちレンジャー学生みんなが整列して教官の話を聞いてる時、
またしても突然、急激に尿意が押し寄せてきました。
もう少しで終礼終わる、、、
終わったらすぐに行こう、、、
↑こう思ったのが失敗でした、、、
待たずに挙手をしてトイレにダッシュしていれば良かったのだ、、、
そう、終礼中にどうしても我慢できなかった僕は遂にションベンを漏らしてしまったのだ、、、
やってしまった僕の顔は口がパックリ開いてて絶望感でいっぱい。。。
異変に気付いた同期が教官に報告しバレてしまい軽く騒ぎになりました。。。

ちなみにこれらの症状はレンジャー教育終了後、原隊に復帰した数日のうちにすっかりと治りました。
レンジャー想定訓練での負傷5: 幻覚
実は行軍中、疲労がピークに達してしまい何度か幻覚を見たことがあります。
記事の冒頭でも触れましたが、想定訓練での行軍はとにかく過酷で
食べさせない、寝かさない、休ませない状態の訓練が茶飯事です。

どれだけハードかというと歩きながら睡眠がとれるレベルなのです。
よく歩きながら寝ている姿を助教に見られたらビンタされましたが、、、
ひどい時は走ってる最中にもいつの間にか意識がぶっ飛んでド派手に前のめりでずっこけた事があります。
そんな極限状態で訓練を続けていたら遂に幻覚を見るようになりました、、、
行軍中草木が戦闘服「迷彩服」をきた仲間に見えるのです。
時には絶対ここには居ないはずの原隊の仲間がいる錯覚にも陥りました。
この幻覚が見える状態で行軍をしていたある日
間一髪の恐ろしい体験をした事があります。
ある想定訓練で縦一列で行軍をしていた時の事、
その列が左に直角に左折したのだが、僕が見る前方の草木が迷彩服を着た仲間だと思ってしまい左折した事に気づかず直進していました。
不意に助教に後ろから肩を捕まれ静止させられ「お前!下を見てみろ!!」と言われました。
下を見るとそこは崖となっていました、、、
もし助教に止められてなかったら僕は崖へ真っ逆さまだと思うとゾッとしました、、、
その後、助教からは喝「ビンタ」を入れられましたが、、、
こんな漫画のような事が本当に起こったのです、、、
レンジャー想定訓練での負傷6: 塹壕「ざんごう」足とイボ
塹壕「ざんごう」足は別名、浸水足とも呼ばれています。
塹壕足とは?
湿潤を伴う低温への長時間の曝露は,浸水足を引き起こしうる。通常は末梢神経と血管が損傷するが,重症例では筋肉および皮膚組織が損傷することがある。
最初に,足部が青白く浮腫状となり,じっとりと冷たく無感覚である。患者がよく歩く場合には組織の浸軟が生じることがある。復温により充血,疼痛,そしてしばしば軽い接触への過敏性が起こり,これらは6~10週間持続しうる。皮膚が潰瘍化したり,黒色の痂皮が生じたりすることがある。自律神経機能障害が多くみられ,発汗の増加または減少,血管運動性変化,および温度変化への局所的過敏性を伴う。筋萎縮および異常感覚または感覚脱失が起き,慢性化する場合がある。
浸水足は,窮屈なブーツを履かず,足とブーツを乾いた状態に保って,靴下を頻繁に取り替えることにより予防可能である。
緊急治療として,40~42℃の温水に病変部位を浸して復温し,その後滅菌包帯で覆う。 ニコチン は避けるべきである。慢性の神経障害症状は治療が困難である;アミトリプチリンを試してもよい
引用元: https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/22-外傷と中毒/寒冷障害/凍結を伴わない組織損傷
塹壕足の特徴は足の裏全体が風呂上がりのしわしわの手のような状態になる事です。
画像は塹壕足でググると見れますのでお好みでご覧ください。

こうなったらしばらくは乾燥させたり軟膏塗りつつ安静にさせておくのが1番。
通常、一般部隊では行軍した後一日おきにまた行軍したりなんてスケジュールはありませんから
仮に塹壕足になったとしてもすぐに直す事ができますが、、、
レンジャー訓練のように連発で何度も行軍を繰り返していると治るどことか
どんどんばい菌が溜まって悪化していきます。
僕の場合それが原因でイボも併発させました。
疣といってもデキモノではなくクレーターのような穴ボコができてしまったので医務官「衛生兵」に
軟膏をつけた綿棒でその穴の中をグリグリと塗られました。

レンジャー想定訓練での負傷7: 体重の激減とリバウンド
想定訓練は、何度も言うが、とにかく過酷。
食べさせない、休ませない、寝かさない、、、
こんな状況下で行軍してたら当然体は干からびてしまう、、、
ひどい時はたったの3日のうちに体重が9、5キロも減少した事があった。。。
想定訓練の状況が終了し飯をたらふく食う→想定訓練開始で食えない→これをループ
こんな生活をしているといつの間にか満腹中枢がおかしくなりどれだけ食べても満腹にはならないのです、、、
お腹がパンパンになっても苦しくないんです。
レンジャー同期と外食してる時、そんな状態になっても食事の手を止めない僕を見てもう辞めとけと止められる程です。
特にレンジャー訓練を修了し原隊に復帰したから暴飲暴食が激しくなり10キロ近くリバウンドしました。

まとめ
上記で説明した傷病の他にもシンスプリントや謎に肋骨あたりが痛くなったり、
同期の1人は行軍中に蜂に刺されたが応急処置しすぐに訓練再開してました。
よくレンジャー訓練はその過酷さから5年は寿命が縮むと揶揄「やゆ」されますが
その噂どおりあらゆる困難と戦いました。
今回紹介した怪我を含め仲間と共にあらゆる困難に打ち勝ってできた経験とレンジャーバッチは
まさに一生ものの宝となったのです。
これからもレンジャーの体験談を更新していくので興味ある方は楽しみに待っててくださいね?
それではまた!
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